Vol.20 進化を続けるシチリアの赤いオレンジ
今時のオレンジ事情を伺おうと、 シチリアの赤オレンジの産地モッタ・サンタ・アナスタシアを訪れました。
→前回のレポートはこちら
モッタ農業共同組合では43ヘクタールに約40,000 本のオレンジを栽培しています。
ブラッドオレンジだけでなく、レモン、マンダリンオレンジ、ネーブルオレンジなど、 多角的にオレンジを栽培。
オリビアさんに農園をご案内して頂きお話を伺いました。
タロッコ種もいろいろあって、今はタロッコ・メリがたわわに実っています。
「うちのカヴァッロ・ディ・バッタリアはこれだよ」といって見せてくれたのが、こちら。
おー、全体的に赤い!
いただいてみると、ジューシーで甘い。
甘いだけのオレンジは個人的に好きでないのですが、酸味と甘みのバランスが最高。
その名も、Il Fragolino(イル・フラゴリーノ)。
意味は愛しみを込めてイチゴちゃんといったところでしょうか。
果皮も果肉も赤さがきわだち、ジューシーで甘く、赤みが多いぶんとても甘く、 後味がイチゴのような香りということから名前をつけたそうです。
普通のブラッドオレンジは、タロッコの場合、 果肉はオレンジ色が基本でところどころ赤みがさしているのですが、 時期や個体によって赤みがバラバラ。
紅葉と一緒で、赤みの強いものもオレンジ色っぽいものもあるわけです。
ですが、このイル・フラゴリーノは全体的に赤いのです。
赤みが強い方がアントシアニン含有量も多く、 甘みも際立つ傾向にあるので、赤みが多いこの品種は非常に有利!
「カヴァッロ・ディ・バッタリア/Cavallo di battaglia」というのは直訳すると 戦場の馬、得意なもの、十八番というような意味です。
商標登録されているこちらの主力商品です。
普通のタロッコでも、皮の赤みが強いものは中身も赤みが強いので
購入する時の目安になりますが、「イル・フラゴリーノ」は皮の赤みが本当に強い!
あまりの美味しさに、購入していこうと思ったのですが、
イル・フラゴリーノは収穫が早くなんと12月…
もうほとんど残っていないとのこと???
あーもっと早く最盛期に来たかった。 ??? 来冬を待たないと。
しかし、イル・フラゴリーノは主に北イタリアや ヨーロッパ各地に出荷されるので、
産地であるシチリアではお目にかかれません。
ここに来て分けていただかないと手に入らない貴重なオレンジ!
付加価値の高い赤いオレンジは高く売れるシチリアの外に出ていってしまうのです。
そういえば、本当においしい赤い100%生オレンジジュースパッケージは
ほとんどが北イタリアや海外向けに出荷され、シチリアではほとんど見かけません。
シチリアで売られている赤いオレンジジュースはほとんどが濃縮還元ジュース。
他のフルーツジュースとともに一般の陳列棚に並んでいます。
一方濃縮還元していない絞っただけの100%オレンジジュースは
生もので非常に繊細なため、スーパーでも温度管理している冷蔵庫に保存されてれています。
オレンジを絞っただけの100%生ジュースは、一般の濃縮還元ジュースとは、
全然違う!
ちなみに料金も少々高めで、有機栽培オレンジジュース(500ml)は、€3.09 一般的な濃縮還元ジュースは 1リットルパックで€1.29から€1.89くらい。
3〜6倍近くのお値段。
オレンジの産地シチリアでは、新鮮な生フルーツを買って来て自分で絞れるので、 高価なジュースは一般的に売れないのです。
シチリアでフレッシュブラッドオレンジがない時期、こちらが唯一シチリア赤オレンジ100%のジュースです。
コープは全国的に展開されていますので、イタリアの他の地域でも見つかるかもしれません。
見かけたら是非買ってみてください!
- Author Profile
原 志津子/shizuko hara
シチリア州公認ガイド、日本語通訳。 当地在住14年(2016年時点)になりますが、歴史と文化の薫る、美しい自然のシチリアが大好きです。
日頃よりシチリアを中心に旅行客の皆様をご案内しながら、 素晴らしいシチリアの魅力を少しでも多くの皆様に知ってもらいたいと思っています。
自らも、おいしいものと旅が大好きで、愛車TOYOTA YARISでシチリア中をまわり歩く個人旅行者です。
趣味はシチリアの豊富な食材を使った料理で、得意料理はイカスミリゾット、カポナータ。
http://www.shizukohara.com/