Vol.1 シチリア 水の神話と歴史について
シチリア島有数のリゾート地、タオルミーナ(Taormina)でガイドをしている原 志津子です!
みなさん、「シチリア」と聞いて何を思い浮かべますか?
レモン?豊かな自然?映画「ゴッドファーザー」のロケ地…?
北イタリアに比べると、日本からの旅行客が少ないシチリア島ですが、
ヨーロッパからはたくさんの方がバカンスを過ごしにやって来ます。
自然が豊かで食べ物はおいしい、文化的な史跡もあり、見どころがたくさん!
これから月に一回、シチリアからの現地情報をお伝えします。
日本に住むみなさんにも、シチリア島の魅力が伝わればうれしいです。
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今回のお話しに出てくるのは、ココ!
さて、イタリア南部からシチリアにかけては
古代にギリシャ人が開拓して作ったという起源を持つ町が多く存在します。
町を建設するにあたって「水」の確保はとても重要だったことでしょう。
シチリアで最も栄えたシラクーサ(Siracusa)には「水」にまつわる神話があります。
舞台は、シラクーサのオルティージャ島に湧き出る美しい泉、
「アレトゥーサの泉(Fontana di Aretura)」。
シラクーサの人々をアレトゥーサの人々と呼ぶほど、シンボルとなっているところでもあります。
<シラクーサ湾のすぐ脇にあるアレトゥーサの泉、汚れない水の象徴としてパピルスが生息する>
神話によれば…
狩りの女神アルテミスに仕えていた美しいニンフのアレトゥーサが沐浴をしていました。
その姿を見たエーリス(ギリシャ南部)の河の神アルペイオスがアレトゥーサに恋をして、彼女に話しかけます。
アレトゥーサは驚いて裸のまま慌てて逃げるのですが、
アルペイオスに追いつかれそうになって、捕まる寸前で女神アルテミスに助けを求めます。
アルテミスは大地に穴を開け、アレトゥーサを水に変えてやります。
アレトゥーサは地下水となり海底の下をくぐり、オルティージャで泉となって湧き出ました。
アルペイオスも河の神であり、水ですから、追いかけてきたみたいです。。。
シラクーサのアレトゥーサの泉とエーリスのアルペイオス河は、
イオニア海を隔てて遠く離れていますが、
古代ギリシャ人たちは、
アルペイオス河とアレトゥーサの泉が海に交わることなく
海底の下でつながっていると信じていたとか。
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シチリア島有数のリゾート地タオルミーナ(Taormina)は、
エトナ山を望む古代ギリシャ・ローマ時代の劇場(Teatro Antico di Taormina)で知られています。
港近くの町をシラクーサに追われ、
山の上に町を建設した経緯を持つ
タオルメニウム(タオルミーナの古代名)にとって、
いつまた何時敵に攻められても良い備えが必要でした。
シラクーサのような湧水はないものの、 当時のギリシャ人は水源から16kmにも及ぶ四つの地下水路を整備しただけでなく、貯水槽も建設。
市民1人が1日2リットル飲むとして8ヶ月分の水を確保できるというものでした。
これがなんと!紀元前3世紀末頃にはあったというのだから、驚きです。
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さて、現代のシチリア人の水事情はどうでしょうか?
ゲーテがかつて訪れたタオルミーナ古代劇場からはイタリア半島のカラブリア州が見えます。
そこにも古代ギリシャ人に起源を持つ都市
「レッジョ・ディ・カラブリア (Reggio di Calabria)」があります。
レッジョ・ディ・カラブリアは古代ギリシャ時代の希少なブロンズ像
「リアチェの戦士 (Bronzi di Riace)」があることでも有名ですが。。
<リアチェ戦士像2体。1972年にリアチェ(Riace)沖の海底から発見され、その後の調査で。紀元前5世紀ごろ作られたとされている。かつてたくさん作られたブロンズ像は後世に溶かされて形を変えてしまったものがほとんどのため、ブロンズ像そのものが希少、このような大きなものでしかも完全な形を留めているのは非常に珍しい。
レッジョ・カラブリア国立考古学博物館 所蔵>
カラブリアは美しい海とともに、汚れない自然の森に囲まれた美しい山々があり、
実は名水の地としても知られています。
ある時、健康に気を使うイタリア人の友人が
「人間の体の半分以上は水、良質な水を摂るのが健康の基本、
そして水は何と言っても
カラブリアのミネラルウォーター『マンジャトレッラ(Mangiatorella)』が最高よ」
と教えてくれた。
飲んでみると確かに美味しい!
クセがなく、違和感なく喉元を通り過ぎ、
体にスーッと浸透していくのが感じられる滑らかな水で、
うーん、これは体が欲している水!と実感です。
以来、我が家の常備水はマンジャトレッラ。
飲料やお料理に使っています。
ヨーロッパの水はその土壌から多くが硬水に当たる中、
マンジャトレッラの水はイタリアでトップレベルの軟水。
軟水は、
・体への吸収がよく、胃腸に負担がかからない
・老廃物の排出を助け、美肌効果がある
と言われています。
成分はラベルに記されています。
重要な項目を見てみると、
■Natural Mineral Water ナチュラルミネラルウォーター:
ミネラル分が天然(人工的添加や成分加工をしていない)の状態で溶け込んでいる鉱化された(地層中の無機塩類が溶解した)地下水を原水とした天然水です。 EU基準の「ナチュラル」は加熱殺菌等の一切の処理がされていない天然水です。
■ミネラル含有量 68.4
180度で加熱した時に残るミネラル分でEU・イタリアの規定で500mg/1ℓ以下のミネラルウォーターはオリゴミネラルウォーター(オリゴ=少量の=軟水)とされています。
■硬度 2.2
1000mlに含まれるカルシウムとマグネシウムの量。ヨーロッパ基準では66以下が軟水、10以下が日本基準の軟水に相当。
■水源の水温 9.1度
■アンモニア及び硝酸化合物 無
これは環境汚染、自然破壊の度合いを示すもので、
これがゼロということは汚れない手つかずの自然環境だということになります。
素晴しい!
■カルシウム 6.8mg/L、マグネシウム 1.5mg/L
上述の硬度の基準になる数値
■ナトリウム量 9.8g
天然水に含まれる微小なナトリウム量と言えます。体にナトリウムは不可欠ですから、この程度はむしろ健康に良いと言えます。
この水はカラブリア州セッレ山地(Serre Calabresi)の天然水。
「環境汚染ゼロって、どんなところ?」
早速セッレ山地に行ってみました❤
次回はセッレ山地のレポートをご紹介します。
- Author Profile
原 志津子/shizuko hara
シチリア州公認ガイド、日本語通訳。 当地在住14年(2016年時点)になりますが、歴史と文化の薫る、美しい自然のシチリアが大好きです。
日頃よりシチリアを中心に旅行客の皆様をご案内しながら、 素晴らしいシチリアの魅力を少しでも多くの皆様に知ってもらいたいと思っています。
自らも、おいしいものと旅が大好きで、愛車TOYOTA YARISでシチリア中をまわり歩く個人旅行者です。
趣味はシチリアの豊富な食材を使った料理で、得意料理はイカスミリゾット、カポナータ。
http://www.shizukohara.com/